今回はシステム化概論ですので、もう少し、徳川安定政権維持のシステム構築にこだわって話を進めてみたいと思います。
先ほどは、 「参勤交代」 をテーマに、そのシステム化のポイントをお伝えしました。
それ以外に、実は幕府にとって大名を黙らせる とても有益なシステム があったことをご存知でしょうか。
それが、表題にある項目です。
「 国主 ・ 城主 ・ 一万石以上ナラビニ近習 ( きんじゅう ) ・ 物頭( ものがしら ) ハ、私ニ婚姻ヲ結ブベカラザル事 」
実際には、武家諸法度の第八番目の項目になります。
現代語訳にすると、以下のようになります。
「 大名やその側近、役人は幕府の許可をえないで婚姻してはならない。 」
という意味です。
ようするに、大名は幕府の許可を得ないで勝手に結婚してはいけないという法令ですが、どうしてこのようなことを言うのか、その背景を システム化 という観点で考えてみたいと思います。
「 単に結婚を許可制にして、将軍の権限を強くするのが目的である 」 と言えばそうかもしれませんが、それ以上に目的があると思われます。
実際、こうした結婚許可制の背景には、大名の妻として迎える女性を、大名が勝手に探すのではなく、幕府から選出したい という意図がありました。
すなわち、江戸幕府は諸大名の婚姻については許可を必要としたのですが、幕府としては遠慮なく諸大名と縁を結ぶことができた わけです。
こうした政略結婚は、諸大名と婚姻関係を結ぶ手として、特に江戸初期に頻発したものでした。
こうした縁組は、江戸幕府以前の戦国、室町時代、あるいはもっと以前にも同様に存在していました。
江戸幕府がとった大名への養女縁組の行動は、それらに比較して さらに戦略的であった と言われています。
すなわちそれは、今でいう 「 情報の遠隔監視システム 」 という仕組み でした。
つまり、単に姻戚関係をむすぶというだけでなく、諸大名の行動を監視する目的を果たしていた わけです。
縁組して大名家に入るのは、将軍の養女ばかりではありません。
多数の侍女などが付き添って縁家にはいるわけで、ヒソヒソ話の集中する台所はもちろん、すべての内情は将軍家につつぬけになっていた わけです。
これを、徳川将軍の情報監視システムとして、図式化すると以下のようになります。
ここで見ていただいてお分かりの通り、コンピュータは当然使っていませんが、その 仕組み としては、 「 ~せざるをえない 」 になっています。
つまり、
「 将軍の悪口や謀反の企てに関しては、城の中ではどのようなヒソヒソ話においても、一切口に出すことはできない。ようするに、こうしたことを考えずに過ごさざるをえない 」 仕組み
になっています。
その意味で、これは 「 効果的なシステム 」 になっていると判断することができます。
システム化の定義が、継続的に成果 / 結果が出る仕組み であると捉えるならば、継続的に成果 / 結果を出すためにはすなわち、
「 ~せざるをえない仕組み 」 を作れば良い ということになります。
コンピュータを入れるだけではシステム化になっていない という理由もここにあります。
よく見かける失敗例ですが、経営者が コンピュータ導入に過度な期待( どちらかというと思い違い ) をしてしまって、コンピュータを入れたら業務効率が上がると考えてしまう という例です。
コンピュータを入れて、ソフトを走らせるだけでは、業務効率化に至っていないのは当然です。
コンピュータもソフトウェアも、データを正しく入出力して、つねに情報更新していかなければ意味がありません。
そこに、
「 ~せざるをえない仕組み 」 として、 「 関与するすべての社員が、コンピュータ入出力をリアルタイムに更新していく仕組み 」
を導入していなければ、コンピュータは不正確な情報を提供するだけの機械であり、使い物になりません。
こうして、多くの会社がコンピュータ化に挫折してしまうわけですが、その前に経営者の方々は、
「 コンピュータ入力せざるをえない仕組み 」 を考えたでしょうか。
あらゆる点で、仕組み ( システム ) を考えていかなければ、コンピュータ化だけでなく、すべての業務が場当たり的になり、全体としてうまくいかないのです。
そして それは、コンピュータが悪いのではありません。
チェックポイント!
「 ~せざるをえない仕組み 」
システム化の定義 が、継続的に成果 / 結果が出る仕組みである と捉えるならば、継続的に成果 / 結果を出すためにはすなわち、「 ~せざるをえない仕組み 」 を作れば良いということになります。事例として、江戸幕府の政権安定持続のシステム を考えてみてください。