特集:「金属プレスが拓く未来の日本製造業」

金属プレスが拓く未来の日本製造業

 

下記の年表は、それぞれの業界が戦後どのように海外へ進出していったかを示している。弱電・家電業界は金属プレス工法を利用して多くの製品を生み出してきたが、これは安い労働力を頼った生産拠点のみの移管だった。これに対して自動車業界が選択したのは、生産地で消費までを行う「地産地消」による海外展開であった。この違いが、それぞれの業界自体の業績を左右する大きなポイントとなったのではないだろうか。

しかしながら、日本の完成度へのこだわりは、最終製品のみならずプレス加工技術・金型製作技術を更なる高みへと押し上げている。CAD/CAM技術が進化しても、工作機械の精度が上がっても、最後に金型を組み立てるのは「人」である。金型へのこだわりの結果高度化したプレス加工技術は多い。

リードフレーム、コネクター、モーターコアのような電気・電子部品群。シートベルト、エアバッグ、EV関連の自動車部品。注射針のような医療機器部品など、ありとあらゆる産業の中にこれらの金型技術を結集したプレス加工品が利用されている。本特集後半ではそういった町工場の誇りある技術を紹介すると同時に、現場の視点から日本のプレス技術の方向性を探る。

 

日本の金属プレス技術の進化と発展

実際のところ、日本の金属プレス製造 技術の進歩はどうなのだろうか。金属プ レスメーカー・金型屋の会社数や従業員 数など、公開されている様々な統計を見 ればその数は減っている。しかしなが ら、日本で生産されている金属プレスの 総量は減少していないと考えられる。ま た、金型の総生産数量も伸びていると推 測できる。理由としては、公にされてい る各種プレス統計と、実態にずれがある ことが挙げられる。

日本メーカーの自動車総生産量は 2500万台を超え、そのうち750万台が 日本で生産されている。1台の自動車を 製造するには、必ず自動車ボディーの絞 りプレス工法が必要になる。自動車のボ ディーの大きさを考えれば、大手自動車 メーカーだけでも相当な金属プレス加工 量となるはずだ。しかし、日本の金属プ レス業界の統計には大手自動車メーカー での生産は含まれていない。同じよう に、日本では冷暖房機器や、建材、電子 部品、医療機器など様々な部材が金属プ レス工法で生み出されているが、その合 計数値は発表されていないのが現状であ る。製品を生み出すにあたってもっとも 重要な工法のひとつでもある金属プレス 工法であるが、国内の実態に即した統計 は取れていない。つまり、統計に数えら れていない生産量を含めれば、日本にお ける金属プレス加工の総量は実は減って はいないのではないだろうか。

現状、国内の素形材産業に対する世間 の認識は低く、特に若年層からは人気が 集まりにくい業界と言える。日本はもの づくり産業に支えられてきた国であり、 今後もものづくりに携わるのであれば、 素形材産業からの情報発信がもっと重要 だろう。

本誌では、プレス機械メーカー、金 属プレス加工メーカー、CAD/CAMメー カーなど、金属プレス加工に関わるさま ざまな立場の企業を取材した。各社の現 状や展望から、日本発の金属プレス加工 がどうあるべきかを考えていく。

掲載企業

インタビュー

・アイダエンジニアリング株式会社
・株式会社アマダプレスシステム
・株式会社山田ドビー
・コマツ産機株式会社
・株式会社三井ハイテック金型事業本部
・しのはらプレスサービス株式会社
・株式会社C&Gシステムズ

加工スクランブル&インタビュー

<海外展開>
・岸本工業株式会社

<独自技術>
・大垣精工株式会社
・太陽工業株式会社
・株式会社ウチダ
・コダマコーポレーション株式会社
・株式会社関プレス

<微細特化による付加価値経営>
・橋本精密工業株式会社

<都市型付加価値経営>
・株式会社特発三協製作所

<集中と選択>
・株式会社飯塚製作所
 

PDFのダウンロード

新規会員登録